【 想いの果てに・・・G 】





帰宅したは、ふと違和感を感じた。

だが、その理由が分からずその場を見回し・・・ある1点で止まった。



「・・・何で?」



思わず首を傾げるのもそのはず、ここは玄関。

その真ん中で『幕末恋華 新選組』のゲームソフトが存在を主張していたのだ。

当然、朝出る時にこんな物を玄関まで持ってきた覚えもない。
だが、直感的にそれが自分の物だという事も、何故か分かっていた。



いぶかしみながらも、手に取ろうと触った瞬間・・・

「えっ?えっ?何!?」

光り出したそのゲームソフトから、手を離す事が出来ない。
頭では『放さなきゃ!』と思うのだが、どうしても身体が動いてくれない。
視線さえ外す事が出来ない。



そしてその光は、ゆっくりとを包み込み、消えて行った。



現代においてそれは、が消えた翌日の事であった。




















大和屋の焼き討ちから、一夜が明けかかっている・・・そんな時刻。

山崎は屋根の上で空を見上げ、首を傾げていた。
闇に紛れるそれに気付けるのは、山崎ならではという事なのだろう。

「私も経験しちゃうって事かしら。」

山崎の視線の先にある黒い点は、少しずつ大きくなっていき、徐々に人の形となっていた。



「ん〜この辺ね。」



落下地点を予測し、そこで待機する。
外見はどうあれ、中身は立派な男。
落ちてきたその人物を難なく受け止め、ニヤリと笑う。

「楽しくなってきそう〜♪」

屯所へと戻るその足取りは、今までで1番軽やかだった。















昨夜の事で、ようやくうとうとし始めたの部屋に、
そんな事は全く関係ないと言いたげな乱入者が1名。

ちゃん!ちゃん!ちょっと起きて!」

「えっ!?何!?」
「山崎さん!?」
「どうかしたんですか!?」

浅い眠りだった2人は、山崎の声に飛び起き、桜庭も隣の部屋から飛び込んできた。

「大変なのよ!」
「いや、だから・・・・・」

『何が?』と聞こうとしたがそのまま固まり、
絶句しているのその横で、桜庭だけが首を傾げている。



山崎の腕の中には、先程落下してきた人物・・・つまり、が抱きかかえられていたのだ。



・・・」
「ふ〜ん、ちゃんっていうんだ。」
「山崎さん、ちゃんを何時、何処で?」
「さっき、屋根の上で。」

「「 ・・・は? 」」



自分達も空から落ちてきた。故にを『屋根の上で』と言うのには納得出来る。
そもそもは『木の上で』なのだから。

「だけど・・・」

そこまで言ったところで、は顔を見合わせ肩を竦める。
どんなに考えても、答えなど導き出せるはずがないのだ。
が今目の前にいる。
それ以上に、必要な事など何もない。





「とりあえず、が目覚めてからだね。」

気を失っているのか、眠っているのか、が目を覚ます兆しは全く見えない。

「今日はこのまま寝ましょう。近藤さん達に話すのも明日でいいよね?」
「大丈夫だと思うわ。まぁ一応私から耳には入れておくわね。」

ウインクしながら部屋を出て行く山崎。
襖の向こう側に『興味津々』と書いてある顔がいくつも見えたような気もするが、
全く気にしていないように、ピシャリと襖が閉められる。

さんやさんと同じようないでたちですね。」
「まぁね・・・ん?それって何?」

「「 え? 」」

首を傾げながら、が指差した先には、1つの風呂敷包み。中には・・・

「これって・・・」
ちゃん用の着物?」

万事抜かりなし。

「山崎さん・・・流石だわ・・・」