【 想いの果てに・・・F 】 「芹沢さんが大和屋を焼き討ちに!」 「「 っ!!! 」」 部屋の外から聞こえてきた誰かの声に、とは弾かれた様に顔を上げ、 そして見合わせて、コクンと頷き部屋を飛び出す。 「オメーらは部屋にいろ!」 永倉の怒鳴り声に一瞬身体を竦ませるが、首を横に振る。 「危ねぇだろうが!」 原田の怒鳴り声にも、黙って首を横に振る2人。 「さん・・・」 「さんも・・・2人とも、どうしたってのさ!?」 何かを感じ取ったかのような沖田と、やはり感じ取ってはいたが、行かせたくない藤堂。 「行かなきゃいけないの。」 「自分の目で見て、自分に突き付けなきゃ・・・」 「・・・何をだ?」 「「 ・・・現実を・・・ 」」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「じゃなきゃ、前へ進めないから。」 「この世界で生きていく為に、必要な事なの。」 「「 ・・・だから、行く! 」」 『行きたい』でも『行かせて』でもなく『行く』と言い切る2人に、彼らはもう何も言えない。 「俺らの傍、離れるんじゃねぇぞ。」 とが大きく頷いたのを確認し、駆け出して行った。 目の前の光景に声を失うと。 史実として知っていても、目の当たりにするのは当然これが初めて。 現代とは違う消火方法にも、少しの衝撃を覚える。 『百聞は一見にしかず』とは正にこの事。 知識として知っているのと、体験して分かっているのとでは、天と地ほどの差がある。 その事を理解しているが故に、彼女達には必要だったのだ。 これから先に起こる様々な事を受け止め、そして受け入れる覚悟をする為に・・・ 何も言わず部屋へと戻る彼女達を、心配気に見つめる永倉達だったが、 彼らの方も、彼女達に掛ける言葉を持ち合わせてはいなかった。 「そろそろ・・・だね。」 「うん・・・」 「私達には、何も出来ない・・・」 「・・・分かってる、分かってるんだよ!・・・でも・・・」 「・・・」 この世界へ文字通り落ちて来て以来、芹沢達とも一緒に生活してきた。 芹沢が、豪胆で男気のある人物だという事も知った。 もちろん、酒が入らなければ・・・の話だが。 「彼らが自分で決め、行動しての結果だから私達に口出す権利はない。」 「それに、私達の行動によって生じた結果に対しての責任も取れない。」 「もっと・・・もっと子供だったら・・・」 「・・・・・」 「後の事なんて考えずに、今の気持ちで突っ走れる子供だったら・・・」 「・・・良かった。なんて、本当は思えないくせに。」 「・・・・・」 「後から生じる歪みから目を背けて、責任転嫁して・・・」 「今、自分さえ満足出来れば・・・なんて・・・さ。」 「に思えるわけがない。」 「うん・・・はぁ・・・やっぱりは冷静だね。」 苦笑しながら呟くに、は肩を竦めて首を横に振る。 「冷静なんじゃなくて、臆病なんだよ。」 「・・・臆病?」 「私達が動く事で生じた歪みによって、全く違う未来へ辿り着くのが怖いって事。」 「ああ・・・それは確かに怖いね。でも、ここはゲームの中の世界だから・・・」 「史実と同じってわけじゃないよね。」 「じゃあそこに、私達が知ってる未来があるかどうかは・・・」 「正直分かりません。それに、私達が入った事で既に歪みは生じてるから・・・」 「干渉してもしなくても、結果どうなるかは・・・分からない。」 「それでも、私は臆病だから動けないって事。」 「・・・それだけじゃないでしょ?」 「彼らの信念の邪魔だけはしたくない。」 「彼らには、彼ららしく生きてほしいから。」 「・・・矛盾・・・だね。」 「・・・うん・・・」 「決まったかい?」 「っ!?・・・近藤さん・・・」 「土方さんも・・・」 部屋を出ようと襖を開けた瞬間、横から近藤の声が降ってくる。 全て分かっているかのような、近藤、土方の表情に苦笑するしかない2人。 「貴方達の行く先を見届ける。」 の言葉に、もコクリと頷く。 「俺達が、どんな道を歩もうとも・・・かい?」 「私達が言ったからって、曲げられるような信念だっけ?」 「ちげえねぇ!」 ニヤリと不適に笑う近藤・土方に思わず見惚れる2人。 それを誤魔化すように、フイッと顔を背け、 「これから何度も迷うだろうけどね。」 「それでいいんじゃねぇか?」 土方の言葉に驚き顔を上げた、の頭を近藤が、の頭を土方が軽くポンポンと叩き、 「迷えばいいんだ。」 「・・・え?」 「迷って迷って・・・そして決めたら、その先は迷うんじゃねぇ。」 「・・・はい。」 「一緒に行こうぜ〜 君達は、俺達の後ろでも前でもなく、そうだろ?」 「それってある意味、とんでもないプレッシャーだよ・・・」 「・・・ぷれ・・・?」 首を傾げる近藤を笑って誤魔化して、とは顔を見合わせる。 「とりあえず今は・・・決めたね。」 「うん、もう迷わない。」 2人にいつもの表情が戻り、気付かれない様にそっと安堵の息を吐く近藤と土方。 そして、心配しているだろう永倉達の元へと駆け出すとを黙って見送る。 自分達の信念が、彼女達を傷付ける事は分かっていたが、 それでも貫けと、他ならぬあの2人が伝えてくれたから。 彼らにとって、最初の苦渋の決断の刻は迫っていた。 |