【 偶然と必然の狭間 C 】





「娘さん、大丈夫かい?」

聞き覚えのない声に揺り動かされ、が目を開けると、

「っ!?」

目の前に居た見知らぬ男達の姿に身を強張らせる。



「別に取って食いやしねぇから心配すんな。」



その男達の後ろから、何処かで見た事のあるような男が現れた。

「あっ・・・ヒノエのお父さん・・・」

(名前忘れた・・・)

「ん?ヒノエの知り合いか?」

その言葉には首を傾げ、そのまま横に振る。
その様子に、今度は堪快が首を傾げる。

「違うのかい?」
「う〜ん・・・」

堪快の質問には答えず考え込む





ここが熊野なのは分かった。
そして、堪快がいてヒノエがいる事も分かった。

つまりここは間違いなく『遙かなる時空の中で3』の世界なのだろう。

だが、周りを見渡したところ、一緒に飛ばされたはずの他の人達の姿は見えない。
将臣の例もある以上、同じ時に飛ばされているとは限らないのだ。





そこまで考えたところで、後ろから声が掛かった。

「それで、君の名前は?」
「・・・です。」
「ふ〜んね。んで歳は?」
「女性に年齢なんて聞くもんじゃありませ・・・ん?」
「女性・・・ねぇ・・・」

無意識で答えていたはそこでやっと気付く。

今の声が、さっき見渡した時には誰も居ないと思った方から聞こえてきた事に。

それと・・・妙に聞き覚えのある事に・・・










「弁慶・・・ヒノエ・・・」










が知っているより、幾分若い弁慶と、幾分幼いヒノエ。
だがその表情は、が知っている2人のまま。
弁慶がにっこり笑顔のまま、そっと手鏡を差し出す。



そこに自分の姿を映し・・・はやっと思い出す・・・



自分の姿が若返っていた事を。




















そのまま堪快の屋敷へと連れて行かれ、はありのまま全てを話した。

と言うより『話させられた』と言う方が正しいだろう。

「これで全部です。・・・でも、どうして私が外見通りの年じゃないって分かったの?」
「アンタの考え込んでた時の表情さ。」
「表情?」

ヒノエの返答に首を傾げているに、弁慶が続ける。

「あの表情は、ある程度経験を積んだ大人特有のものです。外見通りの年ならありえません。」
「そんなもん?」

3人に大きく頷かれ、よく分からないながらも納得する

(まぁ、この人達ならありえるのかな。)

というような納得の仕方だったのだが・・・










「14・・・でいいな。」
「そうですね。そのくらいで丁度良いと思いますよ。」
「1つ上か・・・まぁ、範囲内だしいいぜ。」

「・・・何が?」

首を傾げるに呆れ顔を向ける3人。

の年齢に決まってんだろ。」
「・・・14〜!?」
「その姿でこれからここで生きていく以上、本来の年齢は忘れて下さいね。」
「あ・・・うん。でも・・・14・・・?」
「もっと下でもいいんだぜ。何なら俺より下にするか?」
「14歳ですね。分かりました。」

あっさり頷いたに、全員が笑った。










その日から、は堪快の元に身を寄せる事が決まった。

「部屋数はいくらでもあるからな・・・それに・・・」
「それに?」
「いや、なんでもねぇ。」

誤魔化した堪快に首を傾げるだったが、別段気に留めることはなかった。



「いずれ一族に加わる事になるかもしれんしな。」



ニヤリと笑った堪快の声が聞こえなかったからなのだが、それは良かったのか悪かったのか・・・



『この世界に慣れる為だ』という名目で、堪快とヒノエは何処に行くのもを連れて行った。



故に何時の間にか、はこう呼ばれるようになっていた。



『熊野の姫』と・・・