【 偶然と必然の狭間 D 】 が熊野に現れてから丁度1年後。 次にこの世界に現れたのは、だった。 そこは熊野ではなく・・・ は辺りを見回し、途方に暮れていた。 「ここ・・・何処?」 時代劇のセットのような町並。 すぐそこを流れる川の水面を覗き込んで見ると、 確実に若返っている自分の姿と、何処かで見た事あるような・・・ないような・・・という感じのいでたち。 「そうか・・・遙かの世界のお約束は、私にも通用するのか・・・」 微妙に現実逃避しているな・・・と、自分でも思いつつ溜息をついたところへ、 「お前・・・確か・・・」 「え?」 水面に映っている自分の後ろに人の姿が映り、それが見覚えある人物である事に驚き勢い良く振り向く。 「将臣くん・・・」 (うそっ・・・若い時のまま・・・) 将臣の姿は、時空の狭間でほんの一瞬見えた時と同じ。 つまり・・・望美や譲、そして白龍達がこの世界へ来る3年前。 そしてある事に気付く。 『将臣がを知っている』 「お前も1人か?」 「う、うん・・・あの・・・」 「何だ?」 「どうして将臣くんが、私の事を知ってるの?」 「お前も俺の事知ってんだろ。」 「あ、そっか・・・ん?」 思わず納得しかけ、イヤイヤと首を横に振る。 自分と将臣とでは、基礎知識が違うのだ。 基礎知識というのも変だが、 『自分が知っている=将臣が知っている』 とはならない。 「お前ら、あの子供の後ろに居たよな。確か3人見えたぜ。」 「見えてたんだ・・・」 あの一瞬の間に、白龍の後ろに居た自分達の顔まで覚えてたんだと感心するに、 「顔を覚えてるのは、お前だけだけどな。」 「え?」 「あの時、俺の名前呼んだだろ?」 「・・・えぇ!?」 確かにあの時、は将臣の名前を呟いた。だが正しく呟きだったのだ。 あの距離、あの状態で、聞こえたとは到底思えない。 呆然と将臣を見つめるに、苦笑しつつ肩を竦め、 「聞こえたんだから仕方ないだろ。で、名前は?」 「え?」 「お前だけ俺の名前知ってんのは不公平だろ?」 「ああ・・・です。」 「ね・・・歳いくつだ?俺より下だよな?」 その質問に、う〜んと唸る。 「何だよ?」 「上だけど下みたい。」 「・・・は?」 「説明すると長くなるんだけど・・・」 「じゃあ、いらねぇよ。」 「やっぱり・・・」 「何か事情があるって事だろ。14って事にしとけよ。」 「どうして14?」 「別に意味はねぇよ。そう思っただけだ。」 「そっか・・・うん、14って事にしとく。」 「ああ。で、行く所ないんだろ?」 「うん・・・」 「じゃあ来いよ。」 「え?」 「俺が今厄介になってる所に頼んでやるよ。」 「ありがとう!」 将臣が世話になっている人達は、快くを迎えてくれた。 悪い事は悪いと叱り、良い事は良いと褒めてくれるに帝も懐き、 そんな姿を平家一門の人達も微笑ましく見ていた。 故に何時の間にか、はこう呼ばれるようになっていた。 『平家の姫』と・・・ |