【 偶然と必然の狭間 F 】





再び時間は遡り・・・の現れる2年前・・・



場所は熊野。



、ちょいと来な。」
「何?」

堪快の声にが首を傾げながら部屋へ入ると、
そこには、ヒノエと鴉の姿もあった。

その事に、反対側へと首を傾げる。

「一体・・・何?」

訝しげなの表情に、堪快とヒノエはニヤリと笑う。

思わず部屋を出て行こうかとも考えたが、
それが出来る相手ではない事も、この2年で十分過ぎるほど理解していた。

もう1つ、鴉の存在もをその場に留まらせた。



・・・平家の姫ってぇのを知ってるか?」
「平家の姫?」
「この1年くらいで急に浮上してきた名だ。」
「それは・・・名前なの?」
「いや、通り名ってぇのかねぇ。なかなか妙なお姫さんらしい。」
「妙な・・・?」

普通に聞こえてきた通り名なら、彼らがわざわざに聞くはずもない。
例えそれが女性であってもだ。
つまり、に意見が聞きたい相手なのだという事になる。
 


「基本的には、どんな相手でも物怖じせず、言わなきゃいけねぇ事は言う。」

「相手の立場は気にするが、相手の位は全く気にしねぇ。」

「年は15くらいなんだが、どうにもそんな年とは思えねぇらしい。」



『どうだ?』ともう1度問い掛けられ、ゲーム内容を思い出してみる。



白龍や望美達が行くのは源氏側。

平家側にも色々とあったが・・・

男なら将臣という事も考えられるが、堪快が言っているのは姫・・・すなわち女。



そこまで考えて、1つの可能性に行きつく。



自分が熊野に現れたように、平家側に現れた可能性。



平家に将臣がいる以上、考えられるのは・・・



でも・・・



「どこかの誰かさんとよく似てると思わねぇか?」



それは・・・つまり・・・



・・・?」



の言葉に頷く鴉を確認し、堪快はヒノエを見る。

「決まりだな。」

堪快の言葉に頷き、立ち上がるヒノエ。
そのままの横に行き、腕を掴んで立ち上がらせる。

「行くぜ。」

ほとんど引き摺られながら、それでも抵抗を試みる

「ちょっと待ってよ!ホントになの!?ってか、今から行くの!?」

その言葉にニヤリと人の悪い笑みを浮かべ、

「行ってみりゃ分かる。」

「・・・それはそうなんだけど・・・」

思わず脱力するに、相変わらず笑みを浮かべたまま、



「気にならねぇのか?」

「っ!?」



ならないと言えば、当然嘘になる。

だが、この世界に来て2年、彼女達が現れるのはまだまだ先の事だと思っていた。
急に現在この世界にいると言われても、頭がついていかないのだ。



それでも。



「確かめなきゃいつまで経っても進めないよね。」



頷きながら言うに、ヒノエの表情が優しくなる。

が、それも一瞬の事でさっさと部屋を出て行く。


「さっさと準備しねぇと置いてくぜ!」

「・・・私が行かなくて確認出来るわけ?」

「出来ねぇだろうが、本当に置いてかれるぞ。」


確かに・・・と思い、急いでヒノエを後を追う。
流石に置いて行かれては、1人ではまだまだどうにもならない。





部屋を出て行く2人の後姿を見ながら、堪快が呟く。



「そろそろ動き出すのか・・・?」