【 偶然と必然の狭間 G 】





とある屋敷にて。



その裏庭で薙刀を手に唸っている女性が1人。

もちろん、である。



「難しい・・・」



この時代、この後の事を考えてもある程度は使えておいたほうがいいと思い、
考えた末に導き出したのが、薙刀だった。
ある意味、教師には事欠かない状況だったのも幸いし、かなり上達しているのだが、
本人はどうやら不服らしい。

傍の縁側に座って、の様子を眺めていた帝が、小首を傾げながら聞く。

「何が難しいのだ?」

「帝・・・全部ですよ。」

「???」

帝からすれば、十分使えているように見えるのだが・・・

「帝、は俺から一本取らないと納得しないんですよ。」
「将臣!・・・それはまた無謀な・・・」
「将臣君!帝に変な事吹き込まないでよ!ってか、無謀なんて言葉いつ覚えたんですか!?」
「事実だろ?」
「うっ・・・」
「ついでに、教えたのは俺だ。」
「将臣君・・・帝はまだ5歳だよ、そんな言葉教えないでよ・・・」

思わず脱力するを楽しそうに見ていた将臣だったが、一瞬感じた気配に、



「誰だ!?」



帝を部屋に入れ、すぐに庭へと下りてを後手に隠し、気配のする方を睨みながら剣を構える。



「へぇ・・・よく気が付いたな。」



木の枝に座り、こちらを見下ろしている姿に、の方が絶句する。

「ヒノエ・・・」

「おやおや、平家の姫に知って頂いているとは光栄で。」

「誰だお前・・・」

「俺はヒノエ。用があるのはお前じゃねぇよ、そちらの姫君だ。」

「っ!?どうしてに!?」

将臣の問い掛けをしっかり無視し、木から飛び降りたヒノエはに笑いかける。

「な、何・・・?」





って名に覚えは?」





「っ!?」





?誰だ?」
「どうして・・・」
?」
は・・・一緒に飛ばされた・・・あの時一緒にいた1人・・・」
「っ!?ここに!この世界にいるのか!?」



「いるぜ。」



「っ!・・・が?」

「ああ。」

「無事なの?元気なの?」

「元気過ぎるほどな。」

「良かった・・・」

・・・」

ホッとした笑顔を見せるの頭をポンポンと叩き、優しく見下ろす将臣。
そんな2人の様子を見、肩を竦めながら意味ありげに笑うヒノエ。

「な、なに・・・?」





「いや・・・会いたいか?」





「会えるの!?」

「来てる・・・のか?」

「ああ。」

「会いたい!会いたいよ!」

「じゃあ、ついて来な・・・ああ、そちらのお方は駄目だぜ。」


えっ!?と思い将臣とが振り向くと、そこにはやっぱり小首を傾げた帝が。


「どこかへ行くのか?」
「すぐに帰って来ますので、帝はお留守番してて下さいね。」
「お留守番・・・?」
「はい。」

帝の背に合わせる様にしゃがみ、にっこり笑いながら言うに、帝も笑いながら頷く。

「分かった。早く帰ってくるのだぞ。」
「はい。」
「将臣!」
「何ですか、帝?」
を頼んだぞ!」
「・・・御意。」

片足を折り、少々仰々しく頭を下げる将臣に帝は頷き、部屋へと戻る。

「もういいかい?」
「ああ、悪いな。」

「じゃあ、外で待ってるぜ。」



ヒラリと塀を乗り越えていくヒノエの姿に一瞬目を見張るが、すぐに我に返って正門へと急ぐ。





がいる・・・



この世界に既にが来てる・・・



しかも・・・おそらく・・・熊野に・・・



これは・・・一体・・・どういう事なの・・・?