【 想いの果てに・・・A 】





「えっ、何!? うそっ!? キャーーー!!!」

光に包まれ消えたが現れた場所は、





・・・空だった・・・





重力に逆らう力など持っているはずもなく、当然・・・落ちる。






























彼女が落ちているその先には、1本の大きな木があった。

その太い枝に座り、空を眺めていた1人の男。
彼の目には、当然の姿が見えている。

空中に突然現われ、そのまま落ちてくる、その姿が・・・

「・・・人、ですか?」

首を傾げながらも、その場を動こうとしない男目掛けて、が落ちてくる。



バサッ バサッ バキッ ズサッ・・・・・ガシィッ!



難なく受け止め、腕の中に納まった彼女を見つめる。
両手で自分の身体を抱き締め、なるべく小さくなりながら、必死に目を閉じている。



その姿は、確かに普通の人。普通の女性・・・だが・・・



彼女が着ている着物(?)は、彼が1度も目にした事のない、異様な・・・というより不思議な格好。
閉じている瞳を見てみたくなり、彼はゆっくり話しかける。

「大丈夫ですか?」

その声に驚き、弾かれたように顔を上げたは、男の顔を見て呆然と呟く。

「沖田・・・総司・・・?」
「はい。」

が自分の名前を知っているという事に対して、沖田は何の疑問も抱かなかった。
故に、何の裏も無く、にっこり笑って頷く。・・・が、驚いたのはの方。

この沖田総司という男。史実で残っている顔でもなければ、髪さえ結っていない。その上髪の色は黒でもない。



つまり・・・



『幕末恋華 新選組』に出てくる、沖田総司だったのだ。

「えぇ!?」
「危ない!」

思わず後ろに引こうとした身体を、沖田が引き寄せる。

「また落ちるつもりですか?」
「・・・落ちる?」

恐る恐るといった感じに下を見たは、その高さに驚き、目の前の沖田にしがみ付く。
高所恐怖症というわけではないが、不安定な木の上というのは、かなり恐いものである。
当然、そんな所に登り慣れてなど、いないのだから。










ゆっくりと、沖田の指示を受けながら、は木から下りる。

途中、何度も滑り落ちそうになり、その都度、沖田に助けられながら何とか地面に付いた時には、
全ての力を使い果たしてしまったかのように感じ、そのまま座り込んでしまった。

「沖田くん・・・ありがとう。」
「どういたしまして。・・・立てますか?」

沖田の言葉に、ゆっくりと首を横に振り、

「まだ・・・無理・・・」

「じゃあ、おぶって行きましょうか?」

「・・・・・は?」






























が、沖田の言葉を受け、頭の中が真っ白になった丁度その時、

街へ遊びに・・・もとい、巡回に出ていた永倉、原田、藤堂の3人は、
空の1点を見上げながら、首を傾げていた。

「何だ、ありゃあ?」
「鳥じゃねぇか?」
「でも・・・少しずつ大きくなってない?」

その姿が、少しずつ鮮明になっていく。

「なぁ、あれって人じゃねぇか?」
「・・・女・・・か?」
「ちょっ、あの人落ちる!」



「危ねぇ!」



急いで落下地点へと走り、見事受け止めた原田は、そのままの状態で、困ったように2人を見る。

「どうした、左之?」
「怪我でもしてるの?」
「いや・・・そうじゃねぇってか、分かんねぇんだよ。」

永倉、藤堂が原田の腕の中の女性を見ると、当然と言えば当然、気を失っている。










尋常ではない現われ方。そして、見たことの無い、いでたち。

だが、気を失っている女性をその場に置いて、立ち去る事も出来ず、途方に暮れる3人。

そこへ、をおぶった沖田が通り掛かった。

「あれっ永倉さん達じゃないですか、どうしたんですか?」
「総司!?・・・オメー、そいつは?」

永倉の目がに・・・と言うより、の服装に釘付けになる。

「ああこの人は・・・そういえば、名前を聞いていませんでしたね。」

『教えてもらえますか?』と沖田が続ける前に、永倉がを引き剥がす。

「うわっ!?」

そして、抱きかかえたまま、原田の所に戻り、

「おい、オメーこいつ知ってんじゃねぇか?」

そう言いながら、を原田へと近付ける。

『とりあえず降ろしてよ!』と思いつつ、原田の腕の中を見たは、目を見開く。



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