【 想いの果てに・・・D 】





「自分の身くらいは、自分で守れなきゃ駄目よ!」





まだ寝ていたは、突然女部屋へ乱入してきた山崎に、全くついていけない。
低血圧ではないのだが、ボーッと山崎を眺める2人。

その横で、苦笑している桜庭。こちらは既に、朝稽古の支度をしていた。

「ちょっと2人とも、聞いてるの!?」
「聞いてるけど・・・聞こえてないかも・・・」
「まだ、頭の中寝てる・・・」
「んもう!顔洗って、目を覚ましてらっしゃい!」

「「 は〜い・・・ 」」

「っ!?ちょっと2人とも!待って下さい!」

「「 ・・・? 」」

そのまま部屋を出ようとした2人を、桜庭が慌てて止める。
当然、意味の分かっていないは、首を傾げるだけ。

「そのまま出て行くつもりですか!?」
「・・・駄目かなぁ?」
「駄目です!」

きっぱり言い放ちながら山崎を部屋の外へ出し、2人に着物を渡す。
昨日、着付けを教わったばかりだったが、寝惚けた頭では少々微妙なは、もう1度桜庭に教えてもらいながら着付ける。
一方の方は、たとえ寝惚けていても身体の方が覚えているので、問題はなかった。




















、目は覚めた?」
「ん・・・なんとか。昨日は色々あったからねぇ。」
「身体より、精神の方が疲れきってたよね・・・」
「追い討ちをかけてくれた人達もいたしね。」
「うん・・・」

改めて、外を眺める

現代とはあまりにも違う、清々しい空気を肌で感じ、やはり現実なのだと思う。





「・・・で、私らは何処へ行けばいいの?」

「さぁ?」





ちゃん、ちゃん、こっちよ!」





首を傾げた2人へ、山崎から声が掛かる。

「さぁ2人とも、行くわよ!」

「「 何処へ? 」」

「そんなの決まってるじゃない!」

それだけ言って歩き出す山崎に、『だから何処!?』とは思うが、言っても無駄と諦め、顔を見合わせ溜め息をつく2人。




















「・・・道場?」
「そうよ。」
「どうして、道場なんですか?」
「あんた達・・・本当に私の話、聞いてなかったのね?」

「「 ははは・・・ 」」

笑って誤魔化すしかない2人に、呆れ顔の山崎。と、そこへ・・・

君、君、来たね。」

爽やかな笑顔で近付く山南に、とりあえず挨拶する2人。

「あ、山南さん・・・おはようございます。」
「おはようございます。」
「ああ、おはよう。」

首を傾げる2人に対して、やっぱり首を傾げる山南。

「山崎君、この2人に話してないのかい?」
「話したわよ!話したけど、この2人が聞いてなかったの!」

「寝惚けてました・・・」
「・・・すみません・・・」

頭を下げる2人に苦笑しつつも、優しく笑い、

「昨日は大変だったからね、無理もない。」

そう言うと、説明を始める山南。










山南と山崎曰く。

ここは男所帯。
なるべく幹部達が傍に居て守るが、当然完全ではない。
だから、自分の身くらいは、自分で守れるようになった方がいい。
そして認めたくはないが、1番危険なのは、その幹部達かもしれないからだ。










「「・・・はぁ?」」

前半は理解出来るが、後半の意味が分からないと、首を傾げる

「でも、それが事実なのだよ。私も含めて・・・ね。」
「はいっ!?」

最後の言葉は、に向かって放たれ、『ああ、そういう事か』と納得する

「私も・・・なわけ?」
「もちろんよ!」

見つめ合う山南とは放っておいて、話を進める山崎と

「でも、私達体力ないよ?」
「だから、私もいるんじゃない。」
「山崎さんも?」
「剣術の基本的は事は、敬ちゃんから教わるのが1番なのよ。」
「うん。」
「でも、それだけじゃあんた達は、自分の身さえ守れないでしょ?」
「うん・・・無理だよね。」
「だから、私がそれ以外の事を教えてあげるわ。」
「それ以外の事?」
「剣術以外の戦い方、逃げ方、それから・・・男の急所。」

「「 はいっ!? 」」

いつの間にか2人の会話を聞いていたも、驚いて声を上げる。

「あら、それが1番大切なのよ。あんた達は女なんだから。」

「「 はあ・・・ 」」

「大丈夫よ〜実験台は沢山いるから♪」

「「「 ・・・えっ!? 」」」




















道場に入ると、そこには斎藤の姿があった。

「まさか・・・斎藤さんを実験台にするの!?」
「そうよ〜♪」

「「 えぇっ!? 」」

「冗談よ。」

どこまで本気か分からない山崎に、脱力する

「一ちゃんも監察方だからね、色々と都合がいいのよ。」

『何の都合だろう』と思ったが、口には出さなかった2人。賢明な判断だろう。










1人ずつ教えた方がいいからと、山南がを、斎藤がを教える事になった。

剣の基本的な構え方、足運び、体重移動をに教える山南の横で、
の手を取り、頭の上から順に自分の身体を使って、人間の急所を正確に教えていく斎藤。
1度に全ては無理なので、何ヶ所かを集中して教える。

そして、それが一段落つくと、今度は山崎がを呼び、
道場の隅で、コソコソと男の急所を真剣に教える。

「あの2人で試してみる?」

ニヤリと笑った山崎に、は顔を引き攣らせ、

「「 ・・・山崎さん・・・ 」」

思いっきり、首を横に振ったのだった。




















朝稽古が終わり、朝食だと呼びに来た桜庭が見たものは、

既に、身動き1つ出来ない状態になっていた、の姿だった・・・

心の中で2人は叫ぶ。

『あんのスパルタ教師ども〜〜〜!!!』と・・・