【 想いの果てに・・・ E 】 「ん・・・お前達は・・・」 廊下を歩いていたとの後ろから、聞き覚えのあるような、ないような・・・微妙な声が掛かった。 振り向いた2人の前には、数名の男達。 彼女達に分かったのは、その中心にいる1人だけ。 壬生浪士組局長 芹沢 鴨。 まだ隊務中のはずなのに、お酒の匂いを漂わせる彼らに、2人は眉を顰める。 「近藤、土方は一緒じゃないのか?」 芹沢の言葉に、とは顔を見合わせる。 彼女達の身を、特に芹沢一派から守る為に、は近藤の、は土方の女という事になっていたのだ。 だが、今この状態で、どう答えたらいいのか悩んでいた。 何しろ、相手はどう見ても酔っ払いだ。 変に答えれば、絡まれる事は必須。かと言って、無視するのも得策ではない。 「今から行くところですけど・・・」 少しずつ距離を取ろうとするの腕を、1人の男が掴み、 「近藤なんていいじゃねぇか。それより俺らに酌しろや。」 「ちょっと、離してよ!」 『どこのチンピラよ!』と思っている事は、顔にも態度にもしっかり出ている。 そして同じように腕を掴まれたも、やっぱり態度に出ている。 それは当然、腕を掴んでいる男達の怒りをかうが・・・ 「やめねぇか。」 芹沢の一言で、との腕は解放される。 「近藤や土方の言葉じゃねぇと、聞けねぇのか?」 「たとえ近藤さんに言われたって、聞きませんよこんな事は。」 「お前もか?」 「当たり前です!」 「ほお・・・」 ニヤリと笑って呟くと、そのまま芹沢達は立ち去っていく。 その後ろ姿を見送りながら2人・・・ 「ねぇ・・・」 「・・・ん?」 「なんか、やばかったんじゃない?」 「も・・・そう思う?」 「・・・うん・・・」 「「 っ!? 」」 後ろから、ものすごい冷気を感じ、ビクッと身体を竦める2人。 恐る恐る振り返ってみると、目の前には・・・ 顔は笑っているが、目は全く笑っていない近藤と、眉間に皺がしっかり寄っている土方が。 『こ、こわっ・・・』 本能的に逃げようとしたのだが、当然逃げ切れるわけがなく、近藤の部屋へと強制連行。 『近付くなと言っといただろうが!』 『俺達の助けを何故待てん!』 などと、延々と土方の説教を聞かされる事となり、 『理不尽だ!』とは思っていたが、自分達を心配しての事だと分かっていた為、 とりあえずは、大人しく話を聞いていたとだった。 「よお!」 漸く土方から解放され、ぐったりとした様子で部屋へと戻るとに、後ろから声が掛かる。 『今日はよく声を掛けられる日だなぁ』と思いつつ、振り返った先には、 ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべた永倉、原田、藤堂の姿が。 「オメーら、土方さんから説教くらってたらしいじゃねぇか。」 「な〜にやらかしたんだ?」 「随分、疲れきってるみたいだし。」 どう見ても、面白がってるとしか思えない3人に、溜め息を付きながら、 「な〜んかね・・・芹沢さんに気に入られちゃったかも・・・?」 「「「 はぁ!? 」」」 近くの部屋へと連れて行かれ、交互に事情(?)を説明するとの目の前で、 どんどん機嫌が悪くなっていく3人。 その様子に、『いやだなぁ・・・』と思うものの、やめるわけにもいかない2人。 「・・・・・・・・・・とういわけで、その後近藤さんの部屋に、連行されたの。」 最後まで話し、逃げ出そうとした2人だったが、は永倉に腕を掴まれて止められ、 は、いつの間にか後ろにいた藤堂に肩を押さえられ、立つ事さえ出来なかった。 「オメーらなぁ・・・」 「俺らが言った意味、分かってなかったのかよ!」 「どうしてそこで、我慢しなかったのさ!」 お説教第二段始動。 しかも今回は、三方から・・・ 「ねぇ・・・」 「・・・ん?」 「新選組・・・今はまだ壬生浪士組か・・・の幹部って、過保護集団だったわけ?」 「知らない・・・」 一通りの説教を終え、去って行く3人の背中を見ながら呟く2人の後ろから、 「過保護なわけではないだろう。」 「「 うわっ!? 」」 「何故驚く?」 「・・・斎藤さん・・・」 「突然後ろから声を掛けられたら、驚きますって・・・」 「そうなのか?」 首を傾げる斎藤に、言っても無駄だと判断し、諦めると。 「過保護じゃない?」 「ああ、過保護ではないな。」 いきなり話を戻すに、何の抵抗もなく付いてくる斎藤。流石である。 「じゃあ、何なんですか?」 「それが当然だからだ。」 「当然?」 「過保護が当然?それとも、お説教が当然ですか?」 「そういう事だ。」 「「 へ? 」」 さっさと自己完結して背中を向ける斎藤に、呆然と呟く2人。 「だからどうして斎藤さんって・・・」 「そう意味深なの・・・」 「ってか、言葉が足りないよね。」 「うん。ますます分かんないよ・・・」 顔を見合わせ溜め息をつくが、斎藤を追い掛けようとは、決して思わない2人だった。 「あ、おかえりなさ・・・どうしたんですか!?」 女部屋へと戻ってきた2人を、笑顔で迎えた桜庭だったが、2人のあまりの消沈ぶりに驚き、駆け寄る。 そんな桜庭に、『何でもないよ』と微笑みつつ、とは誓う。 『芹沢達に近付くのはやめよう』と・・・ だが、同時に不安にもなる。 『あっちから近付いてきた場合、どうすればいいわけ?』と・・・ それでも、説教を受けるのは自分達。改めて『理不尽だ!』と感じた2人だった。 |